受講レポート

2022年度第1回インストラクター定例会(2022年7月24日開催)

「人生の立場」を受講して

交流分析士インストラクター  太田自子

 インストラクター定例会(zoom開催)に参加しました。前半は准教授押川聖子先生の講座「人生の立場」でした。途中グループワークもあり、充実した内容でした。1・2級テキストや『TA TODAY』の記述から、要点を抜粋しながらの解説にはじまり、エリクソンの発達理論、メラニー・クラインの対象関係論などを学びました。            

 エリクソンの発達理論では、成長段階を乳児期から老年期まで8段階に設定し、それぞれの段階の発達課題と、課題を克服することで獲得できるもの、段階ごとの重要な対人関係の範囲が一覧表にまとめられていました。先生の言葉で応用の説明が補足され、それぞれの段階を自分自身の人生と照らし合わせてみて、大変興味深く感じました。中でも乳児期の段階が一番重要との説明でしたが、どの段階に居る人にも刺さるヒントが詰まっていると思いました。まさに、死ぬまで一生発達し続けるのだと、またそうありたいと思いました。

 ここでグループワークに入り、自分がどの「人生の立場」にいることが多いか話し合いました。私はつい相手を責めてしまう第3の立場になりやすいのですが、途中で自分も悪かったと反省し、最後は相手も自分も認め、どちらも悪くないのだと理解し、第1の対場で心が落ち着きます。途中の「私も悪かった」は第2の立場だと思っていたのですが、「私も」ということは「相手も」なので、いったん第4の立場を挟んでいたのだと気づきました。第4の立場というと、なんだか絶望的なイメージを持ちますが、誰しもがふと陥りやすい、意外と身近なものなのだと気づきました。

 メラニー・クラインの対象関係論の「妄想-分裂ポジションから抑うつポジションへ」では統合とコントロールを学び、絶望を乗り越えるには母親の忍耐力、愛情の安定性が必要なのだと学びました。ここで「投影」を理解するため、物に喋らせるというちょっとしたワークがありました。このワークでは、深層心理が表出されると気づき、本題から逸れてしまうのですが興味を抱きました。

 バーンの「人生の立場」は、メラニー・クラインのポジション論からヒントを得ているということでした。本物の感情、ラケット感情、第1の立場は、もろもろの複雑な感情を包み込んでいる。Aの機能も欠かせないとのことでした。ここでOK-OKについて話し合うグループワークを行いました。

 グループワークでは、第1の立場は自分が「OK」であることが第一前提だと再認識しました。討議中「相手を信頼するということは委ねることである」という意見が出ました。自分の中ではOK-OKでも相手の反応は分からない。信頼して委ねる。そして受け止める。これは自分がOKでなければ成立しません。そして先ほどの「投影」と同じく、自分の中に歪みやネガティブな面があると、歪んだ解釈をして受け取ってしまうので、やはり自分メンテナンス、自分がOKでいることが最重要であると実感しました。

 午後の部では、普及部会からインストラクターネットワークについて説明があり、インストラクターの活動の在り方について、グループ討議をしました。私は、茨城、群馬、山梨のメンバー5名のグループに入りました。多くの人に学んで欲しい!という熱い思いを共有でき、TAは豊かな人生を送るためのヒントが詰まった素晴らしい学びなので、その普及に努めたいという思いを一層強くしました。

 しかしながら、一般的にTAは知名度と社会的認知度が低いため、講座開催の呼びかけに反応する人たちが少なく、集客に苦心する場面の多いことが共通の課題として確認されました。様々な場面でTAの内容が活用されているのに、大本の理論がTAであることを知られていない歯がゆさ。知名度が上がれば、自ら学びたいという人も増え、入門講座やTAカレッジを主催するインストラクターも増えるのではないかと思います。

ではどうしたら知名度が上がるのか?産婦人科や行政機関の子育て相談、各種教育機関が開催するイベント等にTAのブースを設ける機会が増えれば、間口が広がるのではないか。時間に余裕がある学生のうちに学割を使って学べることをもっとアピールするとよいのではないか。有名人や芸能人にTAの魅力を認識してもらい、YouTubeなどで自ら発信をしてもらう。成功例や体験談を集めたPR動画を配信する。はたまた、世の中を動かす仕掛け人的存在にプロモーションを依頼する等々、本当に様々なアイデイアが出ました。

 本部や関東支部の組織力に頼るばかりではなく、自分たちが今、身近な現場でできることは何か?各都道県によって地域の特性は様々で、地理的条件による困難さ、インストラクターの人数や年齢層による課題もあり、それぞれの対策が必要であること、逆に特性を活かせないか等々話し合いました。地元のネットワークは人力でつくるものであり、私たちの工夫と努力とで構築可能だと思います。ただ、TAを学ぶ人が増え、日本交流分析協会の会員も増加していかなければネットワークも発展していかないと思います。会員数が減少傾向にある中で、私たち一人ひとりができる活動を地道に実践し続けていくことと、協会が組織として躍進し力をつけていくこととが両輪となって、TAの普及、発展に繋がるのではないかと思います。